アラフォーの本棚

40前後の中年の読書記録を公開。

書評:レ・ミゼラブル ~降りかかる不幸も心の持ちようでは幸福に?

レ・ミゼラブル

レ・ミゼラブルは、言わずと知れたフランスの作家、ユゴーの名作長編。

とはいえ、私はアラフォーになるまで読んだことがなかった。

こんなことでは恥ずかしすぎる、、、ということで読みました。

新潮文庫版は全5巻。

 

まず、言えることは、フランスの近代史を知っていればより楽しめる。そして、キリスト教の考えをある程度知っていればもっと楽しめる。いずれも不十分な知識のため、本書をきちんと理解できているかというと少し不安だが、とにかく読みました。

 

主人公は、ジャン・ヴァルジャンという壮年の男性。若いころ、魔が差してパン屋からパンを盗んだ罪で刑務所に入れられる。度重なる脱獄等も重ねて、刑期は10年ほどに。

心がすさんだジャン・ヴァルジャンは、刑期を終えた後に社会に出るが、徒刑囚として周りから扱われるため、ますます心がすさむ。

そんな中、手を差し伸べてくれた聖人のような神父へも神父が唯一持っていた金目の物を盗むという態度で罪を重ねてしまう。しかし、神父はそれを許し、ジャン・ヴァルジャンを逃がす。このことが、ジャン・ヴァルジャンの考えを変え、以後、彼はその神父のように生きようとする。

手堅く事業で成功し名声を得たり、養子を迎えたり、と一般的には幸福と言えるイベントが彼にも訪れるが、その都度、徒刑囚であった過去が彼の幸せを脅かす。

 

ジャン・ヴァルジャンの行動は、改心後は聖人そのものだが、徒刑囚という過去が彼が聖人であることを許さない。都度、彼はあるべき姿やとるべき行動と過去を隠すための行動との間で揺れ動き、その描写は非常に人間くさい。

彼自身は迷いながらも、誰も見ていなくても自分だけは自分を見ている、という考えから、困難であってもあるべき姿を貫き通す。

読者の視点からは、彼には小さな幸せこそあるものの、これでもかというほど不幸が襲ってきているように見える。それでも、彼はあるべき姿を貫き通すことで、真の幸福に近づくように努力している。そして、不幸に見えるジャン・ヴァルジャンの人生こそ、人並みの幸福以上の幸福があるのではないか、という感覚を覚える。

彼のような人生は断じて送りたくないが、一方で幸福を不幸との対比で感じるということならば、真の幸福には深い不幸が必要なのかもしれない。そんなことを考えさせられた。