書評:知らないと恥をかく世界の大問題13 ~なんとなくわかった気になっているニュースを理解しなおす
1年に1回のペースで出版される本シリーズは毎年購読。出版時点での重要ニュースをその歴史的な背景までさかのぼって解説してくれるため、分かった気になっているニュースが意外とわかっていないことを教えてくれる。素人が新聞や各種メディアのニュースを見る上での補助的な資料としては、一級品。
今回の巻の主要な話題は、なんといってもロシアによるウクライナ侵攻。
この話題についても、ロシアとウクライナの成り立ちやソ連時代の両国の関係など、過去にさかのぼって、そもそもなぜ今回の侵攻が実行されたかが解説されている。
ウクライナ侵攻は、武力を使って領土を拡張しようとした、という点では、決して許容できることではない。しかし、ロシアを非難するにしても、ロシアがどのような思考で今回の戦争を仕掛けたか、ということを理解しておくのは非常に重要である。ロシアがウクライナをどう思っているのか、EUやアメリカとの関係、等は歴史を起点にして考える必要がある。
また、アメリカについても知っておくべきことは多い。
バイデン大統領は、中間選挙の年に当たり、外交のみに力を割ける状況ではない。コロナ対策やアフガン撤退においても国民から失敗と受け止められており、支持率が下がっているために、その傾向はなお強くなる。
難しいかじ取りを迫られるバイデンだが、もちろん彼だけの責任でそうなったのではなく、過去の大統領も抱えていて対応を行ってこなかった課題である。特にアフガンについては、戦争という手段で民主主義の政治を導入しようとアメリカが介入している側面もあり、この点においてはロシアと似たような行動を実行している、と言えなくもない。
アメリカ一強の時代が終わり、新しい秩序が構築されようとしている過渡期にいるのではないか、なんて知ったようなことを考えるきっかけも与えてくれる良書。