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書評:日本の歴史7 ~武士政権の始まり、貴族社会の黄昏

日本の歴史(7)

日本史の中でも人気の源平合戦から鎌倉幕府の成立・安定までを著している本書。ちょうど、現在放送中の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」と完全に一致する時代。今までの貴族がけん引する社会が終わり、武士が台頭する時代が描かれる。大きな政治の変化の時代であり、そのダイナミズムは読みごたえ抜群。

 

源頼朝の蜂起から始まり、源平合戦鎌倉幕府の成立、源氏の将軍の統治から北条執権政治への変化、承久の乱を経て、鎌倉幕府の安定へ。

 

平家の政治は、武士が貴族化することでその隆盛を極めるが、その路線は行き詰ってしまう。これは、公卿の妨害を受けることや、地方武士の利害の調整を中央では行えないためではないかと思う。一方、頼朝は基盤を関東に置いたため、坂東武士と呼ばれる地方武士の集団を間近に見、中央での政治の掌握は困難であることを悟ったことが幕府成立の要因ではないかと思わせる。

 

また、幕府の成立の合間にも様々な人間ドラマがあるが、義経の悲劇はやはり最も有名なもののひとつ。戦の天才ではあるが、政治感覚の無さが命取りとなる。頼朝は源平合戦の終盤は、明らかに自分が天皇を無視して、日本の政治の主導を握ろうと考えていたと思われるが、義経はそれに理解がなかったのか、自分が取って代わろうという野心を持っていたのか、天皇法皇)に接近しすぎ、頼朝との確執を生む。

義経をも葬り、政治の頂点に上り詰めた頼朝も、急な死を遂げ、その息子である2代、3代の将軍も非業の死を遂げる。源氏の血は絶え、以後は北条家が政治の主導を握る体制に。

平家物語では、諸行無常、盛者必衰の代名詞として平氏があげられるが、その後を追うように源氏も滅んでしまうのは、歴史の残酷さというか、もののあわれというか、そういうものを否応なく感じさせる。