アラフォーの本棚

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書評:魔偶の如き齎すもの ~ 短編の中でホラーとミステリの融合

魔偶の如き齎すもの

刀城言哉シリーズ第3(だったっけ?)短編集。

シリーズ特有の不思議な事件の影に怪異がある、という舞台設定。探偵役・刀城言哉が事件の謎を解くものの、すべての謎を解き切れず、一部に謎が残り、それは怪異のせいでは、という内容。

人を乗っ取る『妖服』、死を超越した『巫死』、人を食う屋敷『獣家』、人に不幸をもたらす『魔偶』、リアル人間椅子『椅人』。これらが関わる事件に大学卒業後間もない刀城言哉が挑む。

 

個人的には、このシリーズの何とも言えない雰囲気がとにかく好き。時代背景は、戦後すぐの日本が混乱の中にある時代で、妖怪やお化けの類がかろうじて出てきそうな時代である。古くは横溝正史金田一耕助シリーズ、最近では京極夏彦百鬼夜行シリーズに近い雰囲気。

ミステリーとしての謎解きを提示しながら、物語が破綻しない程度に解けない謎を残し、それは怪異のせいかも知れない、というホラー的オチをつけるのは、かなりのバランス感覚が必要で、それを成し遂げるのはこの著者の創作の腕がなせる業だと思う。

 

本シリーズの第1作の衝撃が非常に強く、よくできていると感じたので、どうしてもそれと比べてしまいがち。そうすると、本短編は衝撃度もホラー要素も見劣りしてしまうが、それでも十分おもしろい。むしろ、シリーズを全く読んだことのない人には入門書としては最適かもしれない。

ただ、やはり長編のほうがホラー描写を詳細にできるし、ミステリーの謎も広がるので次回長編に大いに期待したい。