アラフォーの本棚

40前後の中年の読書記録を公開。

書評:黄泉のツガイ1 ~面白い漫画の予感

黄泉のツガイ1

能力バトルもの?

まだまだ謎は多いが、今後の展開も面白そう。

 

舞台は、現実離れしたのどかな村から始まる。桃源郷のような村には、風習があったり、神様のような存在が信じられていたり、とファンタジックな要素が最初に提示される。

そんな村にある異変が起こり。。。というのが第1話の展開。

 

タイトルの「ツガイ」というのは、守護霊のような存在で、一般の人間には見えないが、特殊な能力で主を補助する存在。このツガイを使って、ツガイの主同士が戦いを展開する能力バトルものになると思われる展開。

主人公は、第1話で起こった事件の結果、ツガイの主となり、住んでいた村を離れ、村にまつわる謎を解明することとなる。

 

第1巻では、話の前提となる情報や登場人物が提示されており、今後の展開が気になる。

書評:クレイジー・Dの悪霊的失恋1 ~ジョジョ要素を換骨奪胎

クレイジー・Dの悪霊的失恋1

ジョジョの名前を冠しているが、原作も漫画も荒木先生ではない。というところで、不安を感じていたが、個人的にはいい方向に予想が裏切られた!

原作では、味方と敵がスタンドを使って対決するバトル要素が非常に強いが、本作はスタンドのエッセンスを取り入れたミステリー要素が強く、ジョジョの雰囲気は感じつつも一風変わった味わい。

 

※極力、ネタバレの無いように記事を記載するものの、未読の方はご注意ください

 

本作の設定は、原作の第3部と第4部の間の期間。

第3部の登場人物であるホルホースが、スタンド能力を持つオウムを探す依頼を受けるところから物語が始まる。

第1話は、ホルホース、ボインゴ、マライア、ケニーG等、ジョジョ読者ならニヤリとする登場人物が立て続けに登場。オウムが日本の杜王町にいることが判明し、ホルホースがそこに向かう。そこには、これまた第3部の花京院の従姉妹がいて事件に関わり、さらには第4部の主人公の東方仗助とも邂逅し。。。

 

ホルホースは、謎のスタンド使いにたびたび攻撃を受けるが、仗助の力も借りながらス辛くもピンチを切り抜ける。原作は、エピソードごとに味方が敵を倒す展開が多く、敵が多数出てくる中でどんどんそれらを打ち負かしていくが、本作は謎のスタンド使いを追う展開になるのではないかと推測。2巻が待ち遠しい。

 

ただ、ジョジョを読んだ人でないと楽しめない内容なので、万人受けする漫画ではないことは確か。ジョジョ好きは是非読んでほしい。

書評:サウスバウンド ~世間の常識が正解とは限らない?

サウスバウンド

コミカルな中にも、社会への批判が描かれて感動させられる小説。

また、小学生の心情も的確に描いた青春小説であり、少し変わった家族を描く家族小説の要素もある。ページ数は多いが、引き込まれ、どんどん読めた。

青春小説や家族小説が好きな方にはぜひおススメ。

 

主人公は小学生の二郎。

一見ごく普通のどこにでもいる子供だが、父親は元過激派で無政府主義者

学校や警察、税務署とは対立し、社会のはみ出し者として騒ぎを起こす。

主人公の母親も常識人ではあるが、なにやら隠された過去がある様子。

そんな家族が巻き起こす騒動を、小学生である主人公の目線から描いた小説。

 

父親は、その信条から国家権力に対して常に敵対的な発言をする。

例えば、学校については、国家の都合の良い人材を育成する機関のように感じているし、お金持ちをブルジョアジーと言い、労働者階級との対比を言い募る共産主義的発言もする。

 

そんな父を持つ二郎だが、彼自身はいたって普通の感覚を持っており、父親が一般的な人間とは違う思想を持っていることを認識しており、反発もしつつ、一方で変わった人間として受け入れてもいる。

 

この小説の魅力は、変人としての主人公の父親をコミカルに描きつつ、一方で我々が日常感じている生きづらさや社会の矛盾を的確に指摘している痛快さであると個人的には感じた。

一例をあげると、「欲をかかなければお金等は無くても生きていける、原始の社会はそのような社会だった」という思想を主人公の父親が持っている。これは、一般的な感覚からすると理想に過ぎる思想のように感じるが、一方でお金を稼ぐことが社会的地位の確保につながる現代社会に矛盾や不満・不安を感じることは我々にもある。

極端な思想の持ち主で、おおげさな解釈をしてはいるものの、その思想には一理あると言わざるを得ない。そのため、その思想を元に大胆に行動を起こす登場人物は、滑稽を感じるものの馬鹿にはできない存在である。

 

上記、文章にしてみると堅苦しいが、これをコミカルかつ感覚的にとらえられるように小説に仕立て上げられている。

笑いながら、しかし、少し立ち止まって考えさせられるところもある、というのは傑作小説の証ではないか、と思う。