アラフォーの本棚

40前後の中年の読書記録を公開。

書評:ネジ式ザゼツキー ~ミステリーの枠に収まらない傑作本格ミステリー

ネジ式ザゼツキー

奇想。これに尽きる。

よく、こんなストーリーを考え付くな、とただただ脱帽する小説。読後に残るものは少ないが、読んでる最中はこの小説の世界観にただ圧倒される。最高級のエンタメ。

ミステリーを読まない人には、「容疑者Xの献身」を薦めるが、ミステリーを一定程度読んだ人には、本書をお勧めしたい。

 

御手洗潔シリーズの一つ。北欧で脳科学の研究をしている御手洗のもとに、記憶を数分しか保てない人が現れる。その人物はこのような状態なのに、中編の小説のような手記を書く。

第1部は、この中編小説の内容が語られ、第2部では御手洗潔がこの小説がなぜ書かれ、何を示しているかを読み解く。読み解いた結果、現実で行われた過去の殺人事件につながり、、、というのが第3部。

ファンタジックな作り話、その作り話の裏にある真相の解明、そこから導き出される現実の殺人事件、とめくるめく舞台の転換。だが、それを読ませる筆力。

 

御手洗潔シリーズには、トリックが奇抜なものが多いが、本書はトリックではなく小説の構成自体が奇抜、という読者の斜め上を行くストーリーが魅力。とにかく、読む行為自体を楽しめる一級のミステリー。いや、ミステリーのジャンルに収まらない新ジャンルの小説。